国章・都市紋章

ブラジル国旗の意味|緑・黄・27星と標語を読み解く

更新: 編集部
国章・都市紋章

ブラジル国旗の意味|緑・黄・27星と標語を読み解く

ブラジル国旗は、緑地に黄色の菱形、青い天球、白帯と標語を重ねた国旗である。1889年11月15日の共和国宣言の日の朝にリオデジャネイロで見えた星空を写し取った青い円に、27個の星が並ぶ構成は、ただの装飾ではない。緑と黄の意味もまた単純ではなく、森林や金という俗説だけでは捉えきれない三層の歴史を背負っている。

ブラジル国旗は、緑地に黄色の菱形、青い天球、白帯と標語を重ねた国旗である。
1889年11月15日の共和国宣言の日の朝にリオデジャネイロで見えた星空を写し取った青い円に、27個の星が並ぶ構成は、ただの装飾ではない。
緑と黄の意味もまた単純ではなく、森林や金という俗説だけでは捉えきれない三層の歴史を背負っている。
天球を外側から見た図なので星座が左右反転している事実まで含めて読むと、色・星・標語が国家のアイデンティティを図像化した紋章として立ち上がってくる。

ブラジル国旗のデザイン全体像と各要素の意味

ブラジル国旗は、緑の地に黄色い菱形を置き、その中央へ青い円を重ね、白帯に標語を走らせる4層構造です。
サッカー中継やカーニバルで何度も見ていても、円の中の文字や星の数まで言える人は多くありませんが、そこにこそこの旗の面白さがあります。
縦横比は10対7で、偶然の飾りではなく、国家の象徴を図像として厳密に組み上げた紋章だと考えると理解しやすいでしょう。

緑地・黄菱形・青天球・白帯という4層構造

まず押さえたいのは、緑地・黄色の菱形・青い円(天球)・白帯と標語が、それぞれ別の意味を担いながら一つの画面を作っている点です。
国旗のように毎日目にする図像でも、構造を分解して見ると読み方が変わります。
ブラジル国旗は見た目の印象以上に設計が精密で、10対7の比率と、旗の四辺に接しない独立した菱形の配置が、その厳密さを支えています。

緑と黄は、いまでは自然や資源を連想されがちですが、1971年の法令では国家色と補助色として整理されているだけで、色そのものに森林や金の意味を固定していません。
むしろ由来をたどると、緑はブラガンサ家、黄はハプスブルク家という帝政期の王朝色で、1822年の帝国旗から続く骨格が今も残っています。
政体が変わっても図像の中心が持続したこと、そこにこの旗の強さがあります。

27個の星と標語が示す『連邦=州の集合体』

青い円は装飾ではありません。
1889年11月15日の朝、午前8時30分ごろのリオデジャネイロの星空を再現したもので、天球を外側から見た図だから星座が左右反転しています。
星の数は27個で、26州と1連邦直轄区に対応します。
拡大して見ると星の大きさがそろっていないことに気づきますが、あれは等級、つまり星の明るさを反映した差です。
最初に見つけると少し驚きます。

白帯の ORDEM E PROGRESSO はポルトガル語で『秩序と進歩』を意味し、オーギュスト・コントの実証主義を凝縮した標語です。
共和制への移行に関わった人々の多くが実証主義者だったため、単なる飾り文句ではなく、新しい国家の理念を旗の中央へ固定した言葉になりました。
ハイムンド・テイシェイラ・メンデスらが発案し、デシオ・ヴィラレスが彩色し、1889年11月19日に制定されたという流れも、図像と思想が一体であったことを示しています。

要素対応する意味読み取りのポイント
緑地国家色・自然1812年の自然描写ではなく、帝政期からの王朝色として読む
黄菱形国家色・鉱物ではなく王朝色の継承緑との対比で中央部を強調する枠になる
青い円1889年11月15日の朝の星空天球の再現であり、左右反転が生じる
白帯黄道・平和標語の舞台として円を横切る
27個の星26州+1連邦直轄区連邦制の構成員を可視化する

この対応表で見えるのは、ブラジル国旗が州の集合体を一枚の画面に畳み込んだ図像だという事実です。
単なる抽象図形ではなく、どの要素も政治体制と地理を背負っている。
だからこそ、星の数や白帯の位置は細部ではなく、国そのものの構造を語る中心なのです。

西洋紋章のティンクチャー・チャージと国旗デザインの共通点

西洋紋章学では、色をティンクチャー、図像をチャージとして組み合わせ、意味を立ち上げます。
ブラジル国旗も同じ発想で見ると、緑や黄のような色がティンクチャー、菱形・星・標語がチャージとして働いています。
国旗をただの布ではなく、国家の象徴を整理した紋章として読む視点がここで生きてきます。

この見方が有効なのは、細部の解釈に公式規定・俗説・歴史的由来が混じるからです。
緑=熱帯雨林、黄=鉱物資源という説明は広く流通していますが、実際には帝政期の王朝色が土台にあります。
本文では、このあと各要素を章ごとに分けて確かめていきます。
安易な一行解説で終わらせない、その姿勢がこの国旗には似合うのです。

緑と黄色は何を表す?公式の色・俗説・王朝由来の3層

ブラジル国旗の緑と黄色は、まず1971年の法令第5700号で国家色として位置づけられ、青と白は補助色として扱われる。
つまり、法が色そのものに「森林」や「金」という意味を直接書き込んでいるわけではない。
読者が最初に切り分けるべきなのは、公式規定、広く流通する俗説、王朝由来という三層だ。

公式規定:緑・黄が国家色、青・白は補助色

公式の骨格を押さえると見え方が変わります。
1971年の法令第5700号は、緑と黄色をブラジルの国家色、青と白を補助色と定めています。
ここで重要なのは、色の法的位置づけと、色に付与された象徴の説明を分けて読むことです。
前者は制度、後者は解釈である。

この整理を知っていると、国旗の議論がぐっとほどけます。
緑地に黄色の菱形、中央の青い天球、白帯の標語という構成は一見すると「それぞれの色に1つずつ意味がある」ように見えますが、実際にはそう単純ではありません。
公式規定はあくまで国家色と補助色の区別を示すもので、自然や資源の物語はそこから派生した読み方だと理解すると迷いません。

項目公式の扱い読み取れる意味
緑国家色由来は王朝色
黄国家色由来は王朝色
青補助色天球の色
白補助色黄道の帯、平和の象徴

広く知られる俗説:緑=森林、黄=金と鉱物

学校教材や観光案内では、緑は熱帯雨林や森林、黄色は金や鉱物資源を表すと説明されることが多いです。
現地のイメージとしては理解しやすく、国土の豊かさを直感的に伝えるには向いています。
だからこそ広まったのでしょう。
ただし、これは非公式の俗説であり、公式規定の文言ではありません。

この点を知らないまま国旗を眺めると、国家色の制度的な意味と、後から乗った象徴解釈が混線します。
観光ガイドや学校教材で「緑は森林、黄は金」と教わったあと、出典をたどって俗説だと分かったとき、印象が少し変わりました。
説明のしやすさと史実の厳密さは一致しない。
そこを見分けるのが、この国旗を正確に読む近道です。

本来の由来:ブラガンサ家とハプスブルク家の王朝色

本来の由来をたどると、緑は初代皇帝ペドロ1世のブラガンサ家、黄は皇妃マリア・レオポルディナのハプスブルク家を象徴していました。
つまり、国旗の核心は自然物の比喩ではなく、帝政期の王朝色を共和国旗に引き継いだ歴史の連続性にあります。
ブラジル帝国旗の画像を並べて見ると、緑と黄の配色が共和国旗と驚くほど近く、政体が変わっても骨格が残ったことが目で分かるはずです。

青と白にも由来があります。
青い円は1889年11月15日の朝、午前8時30分ごろにリオデジャネイロで見えた星空を再現したもので、外側から天球を見た図だから星座が左右反転しています。
白帯は黄道を表し、平和の象徴とも解釈されます。
緑はブラガンサ家、黄はハプスブルク家、青は空、白は黄道。
ここまで押さえると、公式は色を国家色と規定し、意味づけは俗説、ルーツは王朝色だと整理できるでしょう。

青い円は『天球』──1889年11月15日朝のリオの星空

青い円は、1889年11月15日の朝、午前8時30分ごろにリオデジャネイロで見えた星空を写し取ったものです。
単なる装飾ではなく、共和国宣言の瞬間を空に固定した発想にこの国旗の面白さがあります。
しかも、その星の並びや白い帯には、天球の見方そのものが組み込まれているのです。

なぜ星空が左右反転しているのか

最初にこの図を見ると、南十字星の向きが合わない、と感じやすいでしょう。
だが違和感の正体は単純で、これは地上から見上げた空ではなく、天球儀を外側、つまり宇宙側から見た図として描かれているからです。
プラネタリウムや星座アプリで1889年11月15日の南半球の空を再現してみると、国旗の星配置と重なって見える。
あの瞬間に、左右反転は誤りではなく設計思想だと腑に落ちました。

この見方を押さえると、星が逆向きに見える理由はむしろ自然になります。
地表に立つ人間の視点ではなく、天球そのものを一枚の球面として扱い、その外側に図を写したからこそ、星座の関係が保たれる。
見た目の違和感より、天文学的な整合性を優先した図だということです。

白い帯=黄道に込められた意味

円を横切る白い帯は、黄道を表します。
天球上で太陽が通る道を一本の帯として引き、その上に標語を載せることで、言葉を空の構造に重ねているわけです。
旗の中央にただ線を引いたのではなく、天体の運行をそのまま意匠に変えたところに、このデザインの精緻さがあります。
単なる国章ではない。
宇宙の秩序を図案化したものだ、と見ると理解しやすいでしょう。

黄道は天の赤道と混同されやすいが、ここで重要なのは、旗の帯が「空には道筋がある」という考え方を前面に出している点です。
星を散らしただけの図ではなく、どの星がどの面に乗り、どの線が空を横切るかまで決めてある。
そうした構造があるから、白帯の上の標語にも重みが出ます。
おすすめです、細部まで見るならまずこの帯から見るとよいでしょう。

共和国宣言の『朝』を切り取った理由

なぜ「朝」なのか。
そこには、共和国宣言が行われた1889年11月15日の時刻の空を厳密に再現した、という説明が最もよく合います。
午前8時30分ごろのリオデジャネイロで見えた星空を採り入れたからこそ、日付・時刻・場所まで特定できる国旗になったのです。
世界の国旗の中でも、ここまで天文デザインとして成立している例は珍しい。
だからこそ、青い円は歴史の記念ではなく、歴史の瞬間そのものだと言えます。

さらに、この再現性はその後の星の位置や数の扱いにもつながります。
天文計算と州の構成に基づいて更新されてきたため、青い円は固定画面ではなく、制度の変化を映す装置にもなったのです。
後の章で扱う「星の増加」は、ここで見た設計思想の延長線上にあります。
空を写した旗だからこそ、空の記憶も更新される。
そこがこの章の要点です。

27個の星と9星座──星はブラジルの州を表す

ブラジル国旗の27個の星は、26州と1連邦直轄区に1対1で対応しており、星の数そのものが国の構成を示しています。
しかも、その星はただ散らばっているのではなく、9つの星座に属する実在の星として描かれているので、国旗は天文図としても読めるのです。
星の大きさまで等級に沿って描き分けられているため、装飾ではなく意味を持つ配置だとわかります。

星の数=州の数というアメリカ式の発想

ブラジル国旗の星は、州と直轄区の数をそのまま映す仕組みです。
ここはアメリカ星条旗に近い発想で、領土や行政区画が変われば、星の意味も更新される。
国旗を固定された紋章ではなく、連邦制の履歴を刻む図として見ると、この設計の意図がはっきりします。
南米の旗でありながら、州の集合体を星で表すという考え方はかなり実務的です。

星座早見盤を片手に星を1つずつ照合すると、まず南十字星の4つ星がすぐに見つかります。
そこから、残りの星もこいぬ座やおおいぬ座、りゅうこつ座へと順に追えるので、見た目の美しさと照合のしやすさが両立しているのです。
これはおすすめです。
星座の知識があると、国旗の読み方が一気に立体的になります。

国旗に描かれた9つの星座と1等星

描かれる主な星座は、南十字星・こいぬ座・おおいぬ座・りゅうこつ座・おとめ座・うみへび座・はちぶんぎ座・みなみのさんかく座・さそり座の9つです。
1つ1つの星は、その星座の中に実在する星として置かれているため、図案は抽象的な記号ではありません。
こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウス、りゅうこつ座のカノープス、おとめ座のスピカ、さそり座のアンタレスといった1等星が大きく描かれ、明るさの違いが視覚化されています。
なるほど、国旗に天文学がそのまま入っているわけです。

星座代表的な星役割の見え方
南十字星4つの星もっとも見つけやすい基準になる
こいぬ座プロキオン1等星として大きく示される
おおいぬ座シリウス明るさの強さが目立つ
りゅうこつ座カノープス南天の重要な星として置かれる
おとめ座スピカ州対応の照合点になる
さそり座アンタレス1等星の存在感を担う

この表のように、星座ごとに見ていくと、国旗の星が単なる飾りでないことがわかります。
大きさの差は等級の差に対応しており、視覚情報がそのまま天文情報になっています。

1つ1つの星が特定の州に対応する仕組み

各星がどの州を表すかは個別に定められていて、こいぬ座のプロキオンがアマゾナス州、おとめ座のスピカがパラー州といった代表例が知られています。
ただし対応関係は資料ごとに説明が少しずつ違う箇所もあるため、1つの表だけで断定せず、複数の対応を突き合わせて読むのが安全です。
『どの星がどの州か』を調べたときにこの揺れを体感すると、国旗が固定図版ではなく、解釈を伴う地図だと実感できます。

この不一致は、かえって国旗の読み解きに深みを与えます。
星は州を表し、州は連邦の構成単位であり、その配置は歴史の変化に応じて更新されてきたからです。
アメリカ星条旗が州の増加とともに星を増やしてきたのと同じように、ブラジルも州・直轄区の構成変化に応じて星を増やしてきました。
星の数は固定ではなく、生きている地図なのです。
おすすめします、国旗を「図柄」ではなく「行政と天文の対応表」として見てみてください。

標語ORDEM E PROGRESSOの由来と実証主義

白帯に緑文字で記された ORDEM E PROGRESSO は、ポルトガル語で「秩序と進歩」を意味します。
短く見えるこの標語の背後には、フランスの思想家オーギュスト・コント(1798〜1857)が1820年代に提唱した実証主義がある。
ブラジル国旗を理解するうえで、ここが分岐点です。

『秩序と進歩』に込められた意味

ORDEM E PROGRESSO は、コントの実証主義の標語「愛を原理とし、秩序を基礎とし、進歩を目的とする」を凝縮した表現です。
旗に残ったのは「秩序」と「進歩」で、原文にあった「愛」は削られました。
この省略は偶然ではなく、19世紀末のブラジルが、理念を国家の視覚記号へ圧縮していく過程そのものだと読めます。
直訳すると硬い標語ですが、原文を知ると、あえて消された「愛」の不在が当時の空気を物語るのです。

「愛」を落としたことで、旗に刻まれた言葉は感情よりも制度、情緒よりも設計へと傾きました。
実証主義は、世界を観念ではなく観察と法則で捉えようとする立場で、国家建設にもそのまま持ち込まれたわけです。
だからこそ、この標語は飾りではありません。
国家が何を根拠に前へ進むのかを示す、思想の圧縮版だったのです。

なぜフランスの哲学が国旗に?実証主義の影響

1889年の共和制移行に関わった軍人・知識人の多くが、コントの実証主義に傾倒していました。
彼らにとって共和制は単なる政体交代ではなく、奴隷制廃止や近代化と結びついた国家再設計だったからです。
実証主義は、その変化を支える理論として受け取られました。
哲学が一国の国旗の標語になった例は世界的にも珍しく、そこにブラジルの独自性があります。

実証主義という言葉は、日常語としてはなじみが薄いかもしれません。
ただ、ブラジル国旗を入口にすると、19世紀の科学万能思想が国家の理想像とどう結びついたのかが見えてきます。
標語は単なるスローガンではなく、当時の国家ビジョンそのものだった。
そこが面白いところです。

国旗をデザインした実証主義者たち

国旗の意匠を発案したのは、実証主義者ハイムンド・テイシェイラ・メンデス、ミゲル・レモス、天文学者マヌエル・ペレイラ・ヘイスらです。
彩色は画家デシオ・ヴィラレスが担当しました。
専門の違う人材が集まり、思想・天文学・美術が一枚の旗に収束した形です。
設計者の専門性が、天球を思わせる構図の正確さを支えたといえるでしょう。

ここで重要なのは、彼らが国旗を「見た目の記号」としてだけ扱っていない点です。
天文学者が関わったことで星の配置には観測的な厳密さが宿り、実証主義者たちの関与によって標語には政治哲学が入った。
彩色担当のデシオ・ヴィラレスも含め、各自の役割が分かれていたからこそ、国旗は装飾ではなく、共和国の理念を可視化する装置になりました。
おすすめです。
こうした分業の痕跡まで見ると、旗は一段と立体的に見えてきます。

帝政期から現在までの国旗の変遷

ブラジル国旗の変遷は、帝政から共和制への政体転換があっても、緑地と黄色い菱形という骨格が残った点に特徴があります。
見た目は変わっても、旗の中心にある構造は1822年の帝国旗から現行旗へと連続しており、そこに共和制以後の青天球と星が重ねられていきました。
しかも、その完成までにはわずか4日で消えた異例の案が挟まり、国旗が一度で決まったわけではないこともわかります。

ブラジル帝国の国旗

1822年にブラジルが帝国として独立した際、緑地に黄色の菱形を置き、中央に当時の国章を配した国旗が用いられました。
ここで押さえたいのは、単なる古い意匠ではなく、現行旗の土台そのものがこの帝国旗にあることです。
色の配置と図形の輪郭が受け継がれたため、共和制へ移っても「まったく別の旗」に切り替わった印象は薄く、むしろ歴史をまたいで同じ家系が続いているように見えます。

帝政の旗がその後のデザインに影響した理由は、象徴としての連続性が強かったからでしょう。
独立直後の国にとって、旗は新しい主権を示す看板であると同時に、国の顔を安定させる役割も持ちます。
緑地と黄菱形が残ったことで、政治体制は変わっても国家の見え方は急には断絶しなかったのです。
ここがポイントです。

わずか4日で消えた『星条旗そっくり案』

1889年11月15日の共和制移行直後、財務大臣ルイ・バルボーザはアメリカ星条旗を下敷きにした新国旗案を出しました。
しかし、大統領デオドロ・ダ・フォンセカが「星条旗に似すぎ」と難色を示し、この案は撤回されます。
実際に使われたのは11月15日から19日までのわずか4日間だけで、国旗史の中でもきわめて短命な例になりました。

この4日間の案が面白いのは、共和制の象徴を新しく作ろうとした最初の衝動が、結局は定着しなかった点にあります。
帝政からの切り替えで大胆に見せたかったはずの案ほど、外から見たときの類似性が強すぎると受け入れられにくい。
実際に帝国旗・暫定の星条旗案・現行旗を時系列で並べた図を作ってみると、この4日間の案だけが異質で、本流は帝国旗から現行旗へつながっていることが一目でわかりました。
歴史の流れは、案外まっすぐではありません。

星が21から27へ増えた理由

フォンセカの提案で、旗は帝国旗を下敷きに作り直され、青天球と標語を加えた現在の原型が1889年11月19日に正式制定されました。
当初の星は21星でしたが、その後は州や直轄区の構成変化に合わせて1960年、1968年、1992年と増えていきます。
現行の27星デザインは1992年5月11日に確定したもので、国旗が国土の変化を映す鏡であることを示しています。

星が増える国旗だと知ると、旗は固定された記号ではなく、行政区画の変化に応じて更新される動的な図像だと実感します。
将来ブラジルの州が増えれば、国旗もまた変わりうるのです。
おすすめなのは、星の配置だけでなく、その背後にある政治地図の変化まで一緒に見ることです。
そうすると、ブラジル国旗はただ美しいだけでなく、国の歴史がそのまま刻まれた設計図だと見えてきます。

似ている国旗・関連する紋章とブラジル国章

ブラジル国旗の識別は、色だけを見ると意外に難しく、星と地球儀のような構図まで含めて見ると一気に読み解きやすくなります。
南十字星を共有する国旗や、緑と黄が目立つ他国旗と比べると、ブラジルは青い天球に星座と標語を載せた点で、かなり独自の設計だとわかります。
さらに国旗とは別に国章も存在し、国家の象徴が一枚に収まっていないこと自体が理解の入口になります。

南十字星を共有する南半球の国旗

南十字星はブラジルだけの専売特許ではなく、オーストラリア、ニュージーランド、サモア、パプアニューギニアの国旗にも描かれます。
だが、同じ星座でも、夜空の配置をそのまま強調する国と、天球を反転したように見せる国があり、ここを見比べるだけで「似ている」の中身がかなり違うとわかるのです。
オーストラリア国旗とブラジル国旗を並べて南十字星を探すと、向きも位置も異なり、星の数え方ではなく図案の文法で区別する感覚が養われます。

この比較で面白いのは、星座が共通でも国家ごとに何を前面に出すかが違う点でしょう。
ブラジルは星空を単なる装飾にせず、青い円の中に「国の空」を閉じ込めたように見せます。
南半球の国旗を眺めるときは、星の有無だけでなく、どの星座をどう配置しているかまで見ると、識別の精度が上がります。

緑・黄が似て見える他国の国旗との違い

緑と黄の組み合わせはアフリカ系の国旗にも多く、ぱっと見ではブラジルと混同されやすいです。
理由はシンプルで、色の印象だけを先に拾うと、樹木、豊かさ、太陽といった連想が重なり、細部の違いが埋もれやすいからです。
そこで見るべきなのが、ブラジルの「青天球+星座+標語」という構成であり、ここが他国旗と決定的に違います。

色の近さで迷ったときは、背景の図像に注目すると整理できます。
たとえば緑と黄が強い旗でも、中央に球体があるか、星が散っているか、帯状の標語が入るかで印象は変わるものです。
ブラジル国旗は単なる配色の国旗ではなく、天文学的なイメージと国家理念を重ねた図案なので、色だけで覚えるより構成で覚えたほうが間違えにくいでしょう。

比較対象目立つ色中央モチーフ識別の決め手
ブラジル国旗緑・黄・青青天球と星座、標語星座と帯が入る
緑・黄が目立つアフリカ系国旗緑・黄非公表配色だけで判断しない
南十字星を描く南半球の国旗国旗ごとに異なる南十字星星の向きと配置

国旗とは別物のブラジル国章

ブラジルには国旗とは別に国章があり、1889年に制定されました。
初めて見ると、五芒星や星の輪、コーヒーやタバコの枝が組み合わさった紋章学的なデザインで、国旗の平面的な印象とはまったく違います。
国家の象徴は旗だけではなく、用途に応じて別の図像体系を持つのだと気づかされる瞬間です。

この国章を合わせて見ると、ブラジルという国家を「色の記号」だけでなく「紋章の文法」で読む視点が手に入ります。
西洋紋章学では、国旗も国章も国家のアイデンティティを図像で表す紋章の一種であり、家紋や王家の紋章と同じように、モチーフの配置や反復から意味を読むことができます。
モチーフ図鑑や国章解説へ目を広げてみてください。
星、枝、標語が別の文脈でどう使われるかを比べると、ブラジル国旗の見え方も変わってくるはずです。

この記事をシェア

関連記事

national

ユニオンジャックの成り立ち|3つの十字が合体した由来

国章・都市紋章

ユニオンジャックの成り立ち|3つの十字が合体した由来

ユニオンジャックは、イングランドの聖ジョージ十字、スコットランドの聖アンドリュー十字、アイルランドの聖パトリック十字を重ねた合成紋章である。単一の図柄として一度に生まれた旗ではなく、1603年の同君連合を背景に1606年4月12日の海軍布告で最初のユニオン・フラッグが定まり、

national

星条旗の星50・縞13が示す意味と歴史

国章・都市紋章

星条旗の星50・縞13が示す意味と歴史

星条旗は、50個の星と13本の縞で成り立つアメリカ合衆国の国旗である。50個の星は現在の50州を、赤と白あわせて13本の縞は独立当時の13植民地を表し、オリンピックや大統領就任式で見かけるたびに、実際に数えてみるとこの対応がはっきり見えてきます。

national

イタリア国旗の意味|緑白赤トリコローレの由来

国章・都市紋章

イタリア国旗の意味|緑白赤トリコローレの由来

イタリア国旗「トリコローレ」は、左から緑・白・赤を並べた縦三色旗で、縦横比は2:3です。まず知りたいのは色の意味ですが、イタリア政府はそれに公式な意味を定めておらず、国土と雪と血、自由と平等と友愛、希望と信仰と愛という複数の解釈が並んでいます。

national

日章旗(日の丸)の由来|起源と意味を解説

国章・都市紋章

日章旗(日の丸)の由来|起源と意味を解説

日の丸は、白地の中央に紅色の円を一つ置いた日本の国旗で、正式には日章旗と呼ばれます。紅い円は日の出の太陽を表し、白と赤が祝色として扱われてきた背景まで含めると、見た目の単純さの裏に長い文化史がある旗です。